詩「ただいまを言えない日」

詩のようなもの

ただいまを言えない日

春の冷たい朝の空気
知らない街並み 彷徨うように
不満そうな顔をした子犬
裸足のわたしを見上げて
そっぽ向いた

確かに強く願ったはずの
あの日の言葉すら見失ったら
こんなからっぽの箱に
意味はあるのかな

丁寧に爪を切る
それしかできない
ただ笑って 泣いて 怒って
それさえできればいいのに
今日も明日も爪を切るだけ

責め立てるように瞬く星

夏の汗ばむ真夜の雷
大切なものは零れ落ちて
なんにも思い出せないような
不安だって忘れていいよ
きっといつかは帰れるから

幸せになんかなれるはずない
分かるはずもないから
分かって欲しくもないから
泣きたいだけ泣いたらいいさ。
無責任に言ったのは誰だった?
肌を逆撫でる独り言
わたし宛ての手紙を

どうか騙されてください。

何も誰も何処もどれも
許してもくれない
それでもいつかきっと
きっと逃げられるはずだって
見つけられもしないまで
生きられもしないこのままで

なのに

愛しい人はだあれ
何処にいますか
わたしの気持ちはだあれ
どこに行ってしまったの
でもきっといつか帰れるから
変えて帰るつもりなの

青い四角の額縁 見上げて泣いて
どこにも届かない指先 悔しくて
終りの見えたお話 眺めて泣いて
背中を貫く棘 動けないわたし

どこにも行けない フレアのスカート
どこにでも行ける風に 少しだけ揺れて
遠くで猫が鳴いている気がしたの
きっと白い猫だと思っていたの

あの猫はどうか安らかであれと

タイトルとURLをコピーしました