詩「シャリラ」

詩のようなもの

シャリラ

こんな夜には
何も視たくない
何も訊きたくない
何も云いたくない
何も感じたくない
何も考えたくない
何もかもが無意味に思える
こんな夜には

こんな夜には
笑いたくない
泣きたくない
食べたくない
飲みたくない
眠りたくない
心も体も怒りに支配されている
こんな夜には

明日は来るのだろうか
明日には何か変わるのだろうか
人々はなぜ
明日が来ることを当然だとしているのか
わたしに明日が来たことを実感できる日は
燃える朝焼けを
左に傾いた視界で何度となく捉えていても
一向に訪れない

こんな夜には
何ひとつ決めてはいけない
何もしないことこそが安全
衝動をいなすことに集中する
それをわかっていることが
こんな夜の 唯一の救い

歯を食いしばっても
叫びだしそうだ
わたしには 何も無い
助けてはくれまいか
助けられもしない人に
助けを乞うた間抜け

こんな夜には
歌を歌おう
だって、死んだら歌えない
月をご覧よ
だって、死んだら見られない
夜風にあたろう
だって、死んだら感じられない
いつにも増して死を意識する
こんな夜には
いつにも増して生を意識しているのだから
星を数えてみたら良い

一生かけても終わらない
わたしはどれだけの星を見るだろう
どれだけ数えるだろう どれだけ知るだろう
わたしは死ぬまでの間に
どれだけの夜を こんな風に過ごすだろう

こんな夜には
詩を綴ろう
こんな夜を過ごしただけ
頁が進む
こんな夜を越えて生きた

夏が近づいているよ
わたしの知らない
金網、碧い海、珊瑚、ジュゴン
裸足で逃げ出した夜を覚えてる?
踊るにしたって傷だらけになる足
この期に及んで、何もできない
赦しを乞う。
誰に? あなたに?
わたしはわたしに赦されたい

誰が為の贖罪?
誰が罪を償う?
ああ、夏が来る。
それでも、夏は来る。
降り注ぐ雨よ 恵みとなれ
破壊の雨が降りしきる中
逃げ惑ったは夢か現か

茹だる暑さの正体を
熱に浮かされるように
熱に魘されるように
持て余している怒りと憎しみ
無かったことにできない
死んじまえ

誰が為に生きる?
誰が為に慈しむ?
愛するものを壊されて
それでも愛したいから
赦しを乞う
わたしはわたしに赦されたい

死んじまえ
わたしはわたしに赦されたい

死んじまえ
わたしはわたしを赦せない

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