世界が終るとき
シロツメクサを器用に紡いで
冠を作ってくれた長くて細い指
わたしははにかんで見せて
かわいいよ。笑うあなたの足元
ぷつん。切れた茎の断面を見る
誰かの犠牲の上で成り立つ
しあわせなんて
でも それが当たり前なんだろう
茜色の空を見るとどうしてか不安になる
やわらかい夜の匂いはどうしてか落ち着く
その不思議な時間がたまらなく好きなんだ
きっと世界の終わりもこんな風に来るはずだって
ママが珍しくベーコンエッグを焦がして
パパは揶揄うように苦笑いをして
わたしはトーストに苺ジャムを山盛りに
そんな遠い昔の記憶を夢で見させられたなら
とても憂鬱な気分で起きなきゃならない
細い腕じゃ抱えきれずに
大切なものだって
どこかで落として忘れてゆくんだ
ずっと一緒にいてくれないか。
あなたの言葉は本当にうれしかったけれど
壊れないものなんてないんだよ。
いつかのわたしの言葉が 心臓を絞めつけてくる
明日のわたしは何を思うのだろう
昨日と同じように笑って泣くのだろう
きっとあなたを失ったとしても
一瞬のまばたきに想いを隠し
歩くことしか出来ないわたしは
一体どこに向かっているのか
一体どうして歩いているのか
東の空が朱く燃えるその一瞬の隙
群青が走り去り星が消えるその瞬間を
はじめてあなたの隣で見たときも
きっと世界の終わりもこんな風に来るはずだって
思っていたんだ
今日も世界がはじまった。
朝陽に照らされたその横顔の
あなたは笑っていたけれど